2026年 | プレスリリース?研究成果
細菌と薬剤耐性拡散の関係理解に新たな道筋 ―水環境中の細菌のエネルギー配分に着目した数理モデル―
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科土木工学専攻 教授 佐野大輔
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 細菌が複数の生理機能に対して限られたエネルギーをどのように配分しているのかを、数理モデルと実験を組み合わせて明らかにしました。
- 酸化亜鉛(ZnO)による環境ストレスが、細菌のエネルギー配分および遺伝子伝播効率に与える影響を解析しました。
- 本成果は、水環境汚染が薬剤耐性の拡散に及ぼす潜在的な影響の理解や評価に貢献するとともに、今後の水環境管理に新たな視点を与えるものです。
【概要】
水環境中に存在する細菌は、限られたエネルギーをどの生理機能に優先的に使うのかという選択を迫られています。
東北大学大学院環境科学研究科のKatayoun Amirfard助教、大学院工学研究科の佐野大輔教授らの研究グループは、細菌が増殖、バイオフィルム形成、接合による薬剤耐性遺伝子伝播、ならびに重金属耐性といった多様な機能に、エネルギーをどのように振り分けているのかを、Dynamic Energy Budget(DEB)理論(注1)に基づく数理モデルを用いて解析しました。特に、さまざまな分野で使用され、水環境中にも広く存在しているZnOへの曝露条件下における細菌のエネルギー配分の経時変化を追跡しました。基質量、バイオフィルム量、細菌濃度、接合(注2)の効率などの実測値を用いてモデルパラメータを推定し、ZnO濃度に応じたエネルギー配分の変化や、各機能へのエネルギー配分の関係を可視化することで、水環境中における薬剤耐性遺伝子の拡散リスクを理解?評価するための新たな知見を得ました。本成果は、今後の水環境管理や薬剤耐性対策への貢献が期待されます。
本研究の成果は2025年12月24日に、水分野の学術誌Water 亲朋棋牌に掲載されました。
図1. 遺伝子受容菌におけるDEBに基づくエネルギー配分モデルの模式図。基質(S)は同化エネルギーフラックス(Jassimilation)によって一次エネルギー源として取り込まれ、貯蔵エネルギー(E)として蓄積される。その後、エネルギー利用フラックス(Jmobilization)を介し、維持(Jmaintenance)、増殖(Jgrowth)、重金属耐性(Jmetal)、バイオフィルム形成(Jbiofilm)、および接合(Jconjugation)に利用される。これらは金属ストレス下および遺伝子供与菌の存在という外部ストレス条件下においてバイオマス(V)の形成へとつながる。
【用語解説】
注1. Dynamic Energy Budget(DEB)理論
生物が取り込んだエネルギーを、成長や生存などの生命活動にどのように配分しているかを表す数理理論。
注2. 接合
細菌どうしが直接つながって遺伝子を受け渡す仕組みであり、遺伝子供与菌が細い線毛を遺伝子受容菌に伸ばして結合し、線毛を通じてプラスミドなどのDNAを遺伝子受容菌に送り込むことで、受け取った細菌は新たな性質(抗生物質への耐性など)を獲得できる。
【論文情報】
タイトル:Energy allocation trade-offs among conjugative transfer, biofilm formation, and heavy metal resistance: A dynamic energy budget theory perspective
著者:Katayoun Dadeh Amirfard, Mohan Amarasiri, Daisuke Sano*
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 教授 佐野大輔
掲載誌:Water 亲朋棋牌
DOI:10.1016/j.watres.2025.12521
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
教授 佐野大輔
TEL: 022-795-7481
Email: daisuke.sano.e1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科
情報広報室
担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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