2025年 | プレスリリース?研究成果
危険な廃棄を資源の循環へ -新しい膜分離プロセスでリチウムイオン電池をごみにしない未来へ-
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科化学工学専攻 教授 渡邉賢
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 廃棄リチウムイオン電池から、化学薬品をほとんど使わずに有価金属を高効率に回収できる新しい膜分離プロセスを確立しました。
- 膜孔径や表面電荷、原液pH、操作圧力などの要因を詳細に解析することで、リチウムを選択的に透過させる高選択性膜を開発し、従来報告値を一桁以上上回る高い分離性能を得ました。
- 高選択的分離によって得られた透過液を濃縮?再結晶化することで、化学薬品を使わず純度99%以上の電池級炭酸リチウムが得られることを実証しました。
【概要】
電動車普及が加速する中、リチウムイオン電池(LIB)の需要が世界的に急増しています。リチウム(Li)やコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)といった金属資源の消費が拡大し、使用済み電池の廃棄も増加しています。これらは、資源の確保と環境負荷の両面で深刻な課題となっており、使用済みLIBからの有価金属の回収と再利用が急務となっています。
東北大学大学院工学研究科附属超臨界溶媒工学研究センターの渡邉賢教授と鄭慶新特任准教授、同研究科の姚学松大学院生らは、エネルギー効率が高く、薬品使用量を大幅に削減できる膜分離技術に着目し、使用済みLIB浸出液からリチウムを高選択的に回収する新しい分離プロセスを確立しました。特に、ナノろ過膜(NF)における水和半径(注1)と電荷の差異を利用することで、Ni2+、Co2+、Mnx+とLi+を高精度に分離できることを実証しました。本成果は、リチウムリサイクルの効率化と環境負荷低減を同時に実現する新技術として、持続可能な資源循環社会の構築に貢献することが期待されます。
本研究成果は米国化学会誌Environmental Science & Technologyにおいて、10月23日にオンライン公開されました。
図1. 使用済みリチウムイオン電池(LIB)からの金属回収プロセスの比較
上段は従来の湿式法プロセスを、下段は本研究で開発した膜分離プロセスを示す。
【用語解説】
注1. 水和半径
水分子がイオンを取り囲んだ状態での有効な半径を指す。
【論文情報】
タイトル:High-Selectivity Separation of Lithium from Spent Lithium-Ion Battery Leachates Using Surface-Modified Commercial Nanofiltration Membranes
著者:Xuesong Yao, Qingxin Zheng*, Vetozora Tjimaka Tjambiru, Panpan Wu, Zixian Li, Aiko Miyamoto & Masaru Watanabe*
*責任著者:
東北大学大学院工学研究科附属超臨界溶媒工学研究センター システム開発部 特任准教授 鄭 慶新
東北大学大学院工学研究科附属超臨界溶媒工学研究センター システム開発部 教授 渡邉 賢
掲載誌:Environmental Science & Technology
DOI:10.1021/acs.est.5c05864
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科附属超臨界溶媒工学研究センター
システム開発部
教授 渡邉 賢
TEL: 022-795-5868
Email: masaru.watanabe.e2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学工学研究科?工学部情報広報室
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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