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腹膜転移型胃がんに治療効果を示すmRNAワクチンを開発 免疫チェックポイント阻害剤と併用する治療法の確立に期待

【本学研究者情報】

〇大学院薬学研究科 薬物送達学分野
教授 秋田英万
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • マウスの実験モデルにおいて、がん細胞特有のタンパク質を標的とした新たなmRNAワクチンを開発
  • mRNAワクチンと免疫チェックポイント阻害剤を併用することで、腹膜転移型胃がんの腫瘍が消失し、転移の予防?治療の両面で有効性を確認
  • 今後、mRNA技術による個別化がんワクチンの開発によって、難治性がんに対する免疫療法の確立に期待

【概要】

近畿大学医学部免疫学教室(大阪府大阪狭山市)准教授 長岡孝治、同主任教授 垣見和宏を中心とした研究グループは、東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区)、東京科学大学総合研究院(東京都千代田区)、大阪大学感染症総合教育研究拠点(大阪府吹田市)、東北大学大学院薬学研究科(宮城県仙台市)、星薬科大学(東京都品川区)らと共同で、mRNA技術を応用した新しいワクチンを開発し、既存薬である免疫チェックポイント阻害剤と併用してマウスに投与することで、腹膜への転移を伴う胃がんに対して強力な治療効果を示すことを世界で初めて明らかにしました。今後、ヒトへの臨床応用が進み、mRNA技術による個別化がんワクチンの開発につながれば、胃がんだけでなく難治性がんに対する治療の可能性を大きく広げると期待されます。

本件に関する論文が、令和7年(2025年)7月31日(木)に、一般社団法人日本胃癌学会が発行する"Gastric Cancer(ガストリック キャンサー)"に掲載されました。

図:mRNAワクチンと免疫チェックポイント阻害剤の併用による、腹膜転移型の胃がんの治療

【用語解説】

※1 mRNAワクチン:遺伝子情報(mRNA)を使ったワクチンで、本研究ではがん細胞特有の目印(ネオアンチゲンなどのがん抗原)を体内で作らせる設計となっている。投与されたmRNAは、体内の細胞にがんの目印となるタンパク質を作らせ、免疫細胞にがんを「異物」として認識させることで、がんを攻撃する免疫反応を引き起こす。新型コロナウイルスワクチンでも用いられた技術。

※2 免疫チェックポイント阻害剤:がん細胞が免疫細胞の攻撃を逃れる仕組み(免疫チェックポイント)を阻害し、免疫システムががん細胞を攻撃できるようにする薬剤。

【論文情報】

タイトル:Neoantigen mRNA vaccines induce progenitor?exhausted T cells that support anti?PD?1 therapy in gastric cancer with peritoneal metastasis
(ネオアンチゲンmRNAワクチンは、腹膜転移を有する胃がんにおいて、前駆疲弊T細胞を誘導し、抗PD-1抗体治療の有効性を高める)
著者:長岡孝治1、中西秀之23、田中浩揮4Jessica Anindita4、川村猛5、田中十志也6、山下雄史67、黒田晃弘8、野村幸世589、秋田英万4、位高啓史23、児玉龍彦 6、垣見和宏1* 
*責任著者
掲載誌:Gastric Cancer
DOI:10.1007/s10120-025-01640-8

※著者の所属先については、下記のプレスリリース本文をご覧ください。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科 薬物送達学分野
教授 秋田英万(あきた ひでたか)
TEL:022-795-6831
Email : hidetaka.akita.a4*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科?薬学部 総務係
TEL:022-795-6801
Email : ph-som*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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