2025年 | プレスリリース?研究成果
内在性機能と外来性機能を併せ持つ人工酵素を開発 ?金属イオンをタンパク質の中で精密に並べて機能を生み出す?
【本学研究者情報】
〇流体科学研究所 准教授 馬渕拓哉
研究室ウェブサイト
【概要】
自然科学研究機構 生命創成探究センター/分子科学研究所/総合研究大学院大学の岡本泰典 准教授(東北大学 学際科学フロンティア研究所 客員准教授)、東北大学 流体科学研究所の馬渕拓哉 准教授、産業技術総合研究所の氷見山幹基 主任研究員らのグループは共同で、ヒトサイトカイン 注1)に人工的な金属構造の三核亜鉛中心を移植し、外来性機能として高い加水分解活性とヒトサイトカインが元来有する内在性機能の両方を持つ人工酵素の創製に成功しました。
移植された三核亜鉛構造は、自然界には見られないものであり、先行研究では、有機合成化学的に精密設計された配位子を用いて構築されています。多核金属中心の構築には、金属イオンの精密な多点配置が必要です。研究グループは、幾何学的探索と量子化学計算を用いることで、タンパク質を、従来の有機合成配位子と同等の精度で、配位子として利用できることを実証しました。
自然界には、現在の有機合成化学的手法では困難な高度物質変換を行っている多核金属中心を有する酵素があります。本研究成果は、天然の高機能性酵素に倣ったグリーンな物質変換技術につながることが期待できます。また、今回移植先としたサイトカインは生体内の様々な現象に応答することから、本研究により創製されたサイトカインベースの人工酵素は、生命現象適応型ケミカルツールとしての発展が期待されます。
本研究成果は、国際科学雑誌Nature Communications にて (日本時間2025年07月31日18時解禁) オンライン掲載されました。

図1. 人工酵素デザインのワークフロー
ステップ1. 幾何学的探索による配位性アミノ酸の導入候補位置のリストアップ
ステップ2. リストアップした配置での量子化学計算による三核亜鉛構造の安定度の予測
【用語解説】
注1)サイトカイン:細胞から分泌される生理活性物質の総称。免疫応答、炎症反応、細胞増殖など様々な生命現象の調節に関わる。
【論文情報】
タイトル: A Cytokine-based Designer Enzyme with an Abiological Multinuclear Metal Center Exhibits Intrinsic and Extrinsic Catalysis
著者: Akiko Ueno#, Fumiko Takida#, Tomoki Kita, Takuro Ishii, Tomoki Himiyama*, Takuya Mabuchi*, and Yasunori Okamoto* (#共筆頭著者、*責任著者)
掲載誌: Nature Communications
DOI: 10.1038/s41467-025-61909-5
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 流体科学研究所 准教授
馬渕拓哉(まぶち たくや)
Tel: 022-217-5225
Email: mabuchi*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学流体科学研究所
国際研究戦略室(広報)
TEL:022-217-5873
Email:ifs-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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